並んで歩く雨道
「わ、雨ふってんじゃんかー」
菊丸の、やや不機嫌な声がレギュラーの残った部室に響いた。
対六角戦に向けのミーティングが終わるころ、ぱらつく程度だった雨がかなりの降水量になっていた。
全員が周りを見回しため息をつく。
あいにく、誰も傘を持ってきていないようだ。
「雨の降る確立・・10%だったんだけどネ」乾は仕方ない。と、もう一度ため息をつき、言い放った。
「小雨になるまで部室で待機。」とたんに上がる不満声に少々顔をゆがめる。
「何でっ!?今日見たいテレビあったのにー!!」「そうっすよ!今日はキャンディーポポちゃんの・・」
言い寄る輩をバッサリ切り捨てる。すると、不二も参戦してくれた。
「別に。帰ってもいいけど、
この雨の中じゃ、風邪引く確立80%・・かな」
「六角戦前に、それは得策じゃないね」
しぶしぶ、桃城と菊丸がベンチに座りなおしたのを合図に、
皆思い思いの暇つぶしを始める。
どこでだって騒げるレギュラー陣は、もうすでにトランプを取り出し
じゃんけんをしていた。
「手塚ー!乾ー!やらないのー?」「あぁ、俺はいい」
「俺も」
乾は、先ほどからずっと黙って外の景色を見ている手塚へ近寄っていった。
「帰りたい?」「・・・いや、ただ・・すまん。何でもない」
言いかけて、うつむく手塚の顔は真っ赤になっている。あらら、と小さな声でつぶやいて、乾は手塚の横に座った。
机に座るなんて、あんまりないことだけど結構いい感じ。普通の事務机に男2人が乗ってるのだ、ギシッと軋むのには目を瞑ろう。
「気になるな。何?続き言ってくれよ」
「別に、・・っ・・大したことじゃ・・」
そう手塚が言ったとたんに、静かに乾はつぶやいた。
「言ってくれなきゃ、ここでキスするよ?」
わざと声を潜めて、かすれた声で囁く。
手塚は、しばらく呆然と口をぱくぱくさせ、やがて声を潜めて怒鳴った。
「なっ・・!何言っ・・ここは部室だぞ!?」「正解。さ、言ってよ手塚」
怒りと羞恥に、普段あまり変わらない顔色が変わる。
手塚って赤面症だっけ、などとくだらないことを考えながら、急かすことなく
続きを待つ。
しばらくの沈黙の後、ポソリと呟かれた言葉を聞き逃してあげるほど、乾は優しくなかったし、そんなのはご免だった。
「・・・その、・・帰れないから、・・お前が傍にいる時間が増えるな・・と・・」
それだけで・・と、まだごにょごにょと口の中で
言い訳を並べ立てる手塚に、乾は机につっぷした。
「何だ!?文句があるのか乾!?
言いたいことあるならはっきり――」
「〜〜〜たくっ!手塚ってば可愛すぎだよ・・」
「かわっ・・!」
俺以外のヤツにそんなこと言わないでね、と囁きながら、
ほっぺたに小さな小さなキスをひとつ送った。
こめんと
わぁー、微妙に長い・・のかな?
この後、乾は手塚にほっぺを殴られます。手塚は純情さんなのです。
ちなみに、トランプの種目はダウト。勝者はもちろん不二殿下にございますー
最下位は桃と菊丸。(すぐに顔に出る)