007 妖精
「あ、・・」
棚を整理していて、偶然見つけた幼稚園の頃の写真。
俺と手塚は幼馴染だから、もちろん、手塚も写っている。
幼稚園でよく行われる、遊戯会。家族の前で劇をしたり踊ったり歌ったりするアレだ。
その写真を見て、思わずブッと噴いてしまった。
クマの耳をつけた俺(ネズミかもしれない)の隣にいるのは、手塚。
この勢いだと、手塚も何かの動物に扮しているはずなのだが・・
そこにいたのは『妖精の羽をつけられた手塚』だった。
「ブっ!あはははははは」
「笑いすぎだ、乾」
手塚邸。あまりに面白かったので、近いということもあり、突発的に来てしまった。
どうやら、手塚はこの一軒を早く抹消したいらしい。でもダメ。面白いから。
「クク・・ごめん。で、何で手塚はこんな格好させられたんだっけ」
「・・・・女子が、一人足らないというので無理やりにな」
「・・ブッ!ふっ、そっか。くくく・・・」
「・・・・・・・。」
たしか、この妖精の名前は「フェアリー・ベル」とか言う名前だった気がする。
なるほど。どうりで仏頂面のはずだ。
「ごめんごめん。でも、この仏頂面で「フェアリー・ベル!」とか呼ばれてた
かと思うと・・ね、」
また笑いが吹き上げてきそうになったので、急いで息を止めた。
このまま笑い続けると、手塚の機嫌は(今以上に)かなり悪くなっちゃうだろうし。
「ごめんって。そんなに睨まないでよ、手塚」
「・・ふん」
「ほら、機嫌直してよ。笑ったことは謝るから、ね?
いいナイター設備のとこ見つけたんでね、今から行かないか?」
「・・ハァ、分かった。
とりあえず!その写真は俺の方で預からせてもらうからな。」
「はいはい、分かりました」
そう言って、フォトアルバムからそれ関連の写真を抜き出し、
手塚に渡す前にもう一度見た。
可愛い羽を生やして、ムスっとしている手塚。
こんなに可愛いのにな、と思いながらも目の前のその人と見比べる。
「何だ、乾」
「・・いや、何にも」
可愛い可愛い。今も昔も、皆・・可愛い。
ナイターから帰り、風呂を浴びてから乾はニヤっと笑った。
あの気難しい手塚に、これをネタにおもちゃにすると、写真が取り上げられる確立は
97%だ。
見つけた瞬間にパソコンに取り込み、引き伸ばしてプリントアウトしたので、ただ今、乾の部屋には『フェアリー・ベル』で一面飾られている。
それを手塚が発見するのは、
不意打ちで乾家にやってきた5日後だった・・・。
こめんと
ちょっと実話入ってます(笑)
あぁ・・でも手塚が不憫だ。乾は策士と見せかけて、自分の策に溺れるタイプ。
壁に貼らなきゃ完璧だったのにネ