中尉の目を盗みサボる仕事の時間ほど、
スリリングなものはない。

 

軍の狗と銀時計

 

軍敷地内で、ロイはホークアイの愛犬である
ブラックハヤテ号と遊んでいた。

・・もちろん職務を怠惰して、のことだが。

 

「よーし、いいか。これ取ってくるんだぞ?・・よし、とってこーい!

棒切れをつかんでは遠くへ投げ、持ってこさせる。
随分と長い事そうやって遊んでいたがロイはそろそろ疲れてきた。

「・・歳か・・?」

三十路前でのこの呟きは本気度が高くて怖い。
次で最後だとばかりにロイは思いっきり投げた

きらり

妙にきらきら光る見覚えのあるものを。

「・・あ?っぁ、あ゛ーーーー!!!!」

 

無駄に金かけてるよね、な感じの素敵な銀時計。
国家錬金術師の証であるそれを、犬にヨダレまみれに
される前にどうあっても死守したい。
ロイは久々に本気で走った。

 

「ぜぇっ・・ぜっ、ぜぇ・・うっ、おぇえ(汗)!!」

走りすぎて思わず嘔吐感がこみ上げる。

最近デスクワークばかりでろくに体を動かしていないのも
たたったようだ。
そうでなくとも、ロイの得意とする焔での錬金術は、
別段動かなくても遠距離攻撃が可能なのだから致し方ない。


「はぁ・・」

軍の狗、かける2。
ロイ・マスタングは、間に合わずヨダレでべちょべちょに
された銀時計を握り締めて、そっと溜め息をついた。


それも、サボリを発見した中尉がいきなり発砲するまでのお話。

 

 

 

+あとがき+

狗の定義を間違えて、かなり難産。ザマミロ!(オィ)